株式会社計画情報研究所

COLUMN

計画情報研究所 図書委員会中間報告

当社では、平成24年7月から専門家としての知識共有を目的に、社内での図書委員会活動を開始している。活動は、1ヶ月に一度、テーマに基づく推薦図書を選んで“書評”を作成し、社内メンバーに紹介しつつ、内容について議論を行うというスタイルだ。
今回は、平成24年度、平成25年度の図書委員会の活動報告として、これまで取り上げた推薦図書について紹介したい。

平成24年7月

【テーマ】コンパクトシティ

【推薦図書】

  • 「アメリカ大都市の死と生」(J・ジェコブス著,1961,黒川紀章翻訳,鹿島出版会,1977)
  • 「コンパクトシティの計画とデザイン」(海道清信著,学芸出版社,2007)
  • 「人口減少時代における土地利用計画都市周辺部の持続可能性を探る」(川上光彦・浦山益郎・飯田直彦・土地利用研究会編著,学芸出版社,2010)

コンパクトシティをテーマにした3冊を推薦図書として選んだ。60年代に著されたジェイコブズから問題意識は変わっておらず、都市のスプロール化に対するアンチテーゼが見てとれる。
詳細については、当社WEBサイト・スタッフコラム「コンパクトシティ」関連本3冊の紹介を参照頂きたい。

平成24年8月

【テーマ】クリエイティブシティ

【推薦図書】

  • 「創造都市への挑戦産業と文化の息づく街へ」(佐々木雅幸著,岩波現代文庫,2012)
  • 「Cities and the Creative Class Richard Florida,2005(クリエイティブ都市経済論)」(リチャード・フロリダ著,小長谷一之訳,日本評論社,2010)
  • 「中心市街地の創造力暮らしの変化をとらえた再生への道」(宗田好史著学芸出版社,2007)

クリエイティブシティをテーマにした3冊を推薦図書として選んだ。「創造都市への挑戦産業と文化の息づく街へ」は、日本のスタンダードと言える一冊であり、経済と都市を統合する形でクリエイティブシティを論じている。「Cities and the Creative Class」は、アメリカにおける産業立地と都市の魅力に関する考察で興味深い。「中心市街地の創造力暮らしの変化をとらえた再生への道」は中心市街地活性化・都市計画の視点からクリエイティブシティについて論じている。

平成24年9月

【テーマ】サスティナブルシティ

【推薦図書】

  • 「サスティナブルシティEUの地域・環境戦略」(川村健一・小門裕幸著,学芸出版社,1995)
  • 「サステイナブルコミュニティ」(岡部朋子著,学芸出版社,2003)
  • 「世界で勝つ!ビジネス戦略力「スマートシティ」で復活する日本企業」(佐々木経世著,PHP研究所,2011)

サスティナブルシティをテーマにした3冊を推薦図書として選んだ。
「サステイナブルコミュニティ」は、エッジシティへ対策としてアメリカで実践されている内容、「サスティナブルシティEUの地域・環境戦略」は、EUの地域間格差の是正のための取り組みに関する内容となっている。この2冊は、いずれも人間中心の都市を取り戻す方策が論じられている。
「世界で勝つ!ビジネス戦略力「スマートシティ」で復活する日本企業」は、環境技術を応用した都市整備であり、前述の2冊で示された思想との統合が今後求められる。

平成24年10月

【テーマ】都市デザイン

【推薦図書】

  • 「テキストランドスケープデザインの歴史」(武田史郎・山崎亮・長濱伸貴編著,学芸出版社,2010)
  • 「街並みの美学」(芦原義信著,岩波書店,1979)
  • 「まとまりの景観デザイン形の規制誘導から関係性の作法へ」(小浦久子著,学芸出版社,2008)

都市デザインをテーマにした3冊を推薦図書として選んだ。
「テキストランドスケープデザインの歴史」は、世界のランドスケープを時間軸で見ている。古典~モダニズム~現代の区分でランドスケープのこれまでの流れを知ることができる。
「街並みの美学」は、日本の都市デザインにおける思想が著された古典といえる一冊であり、景観の基本的な考えを再考できる。
「まとまりの景観デザイン形の規制誘導から関係性の作法へ」は、2008年出版の新しい本であり、実務にもつながる現代的教科書といえる。

平成24年11月

【テーマ】ガバナンス

【推薦図書】

  • 「政策科学入門」(宮川公男著,東洋経済新報社,2002)
  • 「都市計画はどう変わるかマーケットとコミュニティの葛藤を超えて」(小林重敬著,学芸出版社,2008)
  • 「コミュニティデザイン」(山崎亮著,学芸出版社,2011)

ガバナンスをテーマにした3冊を推薦図書として選んだ。
「政策科学入門」は、政策決定の基本理念や基本プロセスが体系的に論じられており、一見生き物のような政策決定のプロセスをシステム的に捉えており興味深い。
「都市計画はどう変わるかマーケットとコミュニティの葛藤を超えて」は、人口減少や市街地減少による逆都市化に対して、あらたな都市づくりの仕組みが必要であるというスタンスに立ち、都市政策の思想と現実について論じる。
「コミュニティデザイン」は、山崎亮氏が実際に行った取り組み内容を通じ、現代の政策におけるコミュニティデザインの可能性について述べられている。

平成25年6月

【推薦図書】

  • 「Civic Pride シビックプライド-都市のコミュニケーションをデザインする」(伊藤香織+紫牟田伸子監修,シビックプライド研究会編,株式会社宣伝会議,2008)

シビックプライド(civic pride)とは、市民が都市に対して持つ誇りや愛着のことを言うが、日本語の郷土愛とは少々ニュアンスが異なる。平成24年度の図書委員会で取り上げた「サスティナブルシティ」と「ガバナンス」を横断するような考え方であり、本書はその考え方に基づいた世界各地での取り組みについて紹介されている。
詳細については、当社WEBサイト・スタッフコラム「『シビックプライド』でまちづくりを考える」を参照頂きたい。

平成25年7月

【推薦図書】

  • 「過疎地域の戦略」(鳥取大学過疎プロジェクト著,谷本圭志+細井由彦編,学芸出版社,2012)

過疎地域が抱える、医療、住民参加・自助公助、公共交通等の分野における課題に対して、新たな仕組みと技術の提案という形で戦略を提示している。また、鳥取の取り組みから、持続可能な地域を支える行政システムについても論じている。
著者がそれぞれ過疎地でのプロジェクトを実践している点が特徴であり、概念整理ではもはや対応不可能な過疎地問題の切実さを認識した上で、それを打破するための小さな可能性が見えてくる。

平成25年8月

【推薦図書】

  • 「WORK SHIFT」(リンダ・グラットン著,池村千秋訳,プレジデント社,2012)

2025年を「未来」とし、私達の世界がどのように変化し、それによって働き方がどのように変化するのか・変化させるのかについて論じられている。
毎日が忙しい人ほど、グローバル経済に飲み込まれない人生とは何か、個人の働き方が変化することによって、どのようにまちが変化していくのかといった疑問が湧くであろう。本書はそのような人にとっては非常に示唆に富んでいる。

平成25年9月

【推薦図書】

  • 「まちづくり:デットライン」(木下斉・広瀬郁著,日経BP社,2013)

本書は、都市の中心部における衰退理由をふまえ、中心部活性化の方法について論じている。
多くの都市で中心部が衰退している理由について、特にキャッシュフローに着目しながら経済面から問題を整理している。また、中心部を活性化させるための7つのステップが示されており、実務にも繋がる内容だ。
エリアマネジメントと、個店の経済的自立の両面が必要であり、地方都市の中心市街地活性化という難問に対して、著者の考え方が示されている。

平成25年10月

【推薦図書】

  • 「都市計画 根底から見直し新たなる挑戦へ」(蓑原敬編著,西村幸夫・佐藤滋・大方潤一郎・中井検裕・中村文彦・広井良典・小川富田・若林祥文・木下眞男著,学芸出版社,2011)

多くの著名な先生方を迎え、これまでの都市計画をふりかえり検証を行っている。いま都市計画は大きな曲がり角にあるという意識に立ち、国レベルの制度、地方自治体のスタンス、交通や住宅等の分野といった、複数の段階や分野での課題と展望が論じられている。
人口減少時代における都市のあり方として、都市と農村を一体的にマネジメントし、ストックを有効活用した人間中心型の都市が提案されており、共感できる部分が多いとともに、実現化へのハードルの高さも認識できる内容である。

都市や地域に関する思想と研究に正解も終わりも無い。古典から最新図書まで読み続け、常に意識化して考えることが重要である。
本委員会は今後もその取り組みを続けていきたい。

編集後記

1冊の本を読むだけでも、普段の読書とは比べものにならないほどの時間がかかりました
。著者は何を伝えたいのか、書評をもとにどのような論点で議論を行うか、そのためには本の内容のどこを抽出して書評を作成するかなど、いろいろなことを考えながら読書を行います。その後、頭のなかで組み立てたストーリーを書評という形に編集します。
書評は、推薦図書の内容紹介だけではなく、社内メンバーと議論ができるよう工夫します。

日常業務をこなしながら、読書&書評づくりを行う時間を設けることは、日常業務が忙しくなればなるほど大変なことでした。仕事帰りにカフェによって紅茶を片手に遅くまで本を読んだり、休日出勤して書評をつくったりもしました。しかし、図書委員会の活動に向き合うことで、得られたものは多かったと感じています。すぐに効果が出るようなものではありません。焦ってもダメだということもわかりました。

都市や地域に関する思想は、「これをやったら思想を持てます」といったものではありませんでした。本を読んで得た知識、自分で考えたこと、みんなで議論して気づくこと、より深い理解を得ること、さらに業務での現場経験、これらを幾重にも積み重ねて少しずつ自分固有の主張を持てるものだと思います。1回の積み重ねは小さいかもしれませんが、回を重ねるごとに、大きな成果が出ているのだと思います。その成果を楽しみにしながら、気長に来年度以降も楽しんで活動していきたいと思います。

(大西)