株式会社計画情報研究所

COLUMN

30周年記念シンポジウム トークイベント その1

はじめに

当社の創業30周年記念イベントにおいて、お世話になった方をゲストスピーカーに迎えトークイベントを開催しました。早いもので、記念イベントから1年を迎えようとしています。語り合った熱い思いを3回に分けて振り返りたいと思います。

※トークイベント記録のPDFファイルはコチラ

トークイベントの概要

 日 時:平成28年9月10日(土) 16:00~17:30

 場 所:しいのき迎賓館ガーデンルーム

 テーマ:これからの社会的な課題を解決するための計画のあり方

 登壇者:

 ▼ゲストスピーカー

 金井萬造氏 株式会社地域計画建築研究所(アルパック)相談役/立命館大学経済学部客員教授

 京田憲明氏 株式会社富山市民プラザ代表取締役専務/元富山市都市整備部長

 森山奈美氏 株式会社御祓川代表取締役

 ▼モデレーター

 米田亮 株式会社計画情報研究所取締役/富山支店長

イントロダクション -楽しくポジティブに仕事をする秘訣-

▼米田
本日は「これからの社会的な課題を解決するための計画のあり方」という大きなテーマを掲げました。当社が次の30年を考える上で、中心となる課題であると認識しています。

本題に入る前に、3名のゲストスピーカーの方に共通している点があり、トークの皮切りとさせていただきます。それは「とても楽しそうに仕事をされていること」です。私には想像もできないような困難な局面に対峙することが多いお立場ですが、いつもポジティブなオーラが満載です。今後の当社にとって学ぶべき姿勢であり、その秘訣を教えていただきたく思います。最初に、森山さんからお願いします。森山さんと私は同時期の入社で、一緒に仕事を担当しました。現在、七尾のまちづくり会社で大活躍されています。

▼森山
30周年おめでとうございます。私はいまだに退社したつもりがあまりないものですから、計画情報研究所の一員としてうれしく思っています。

私はプランナーでしたので計画立案は得意ですが、自分の計画を立てるのは不得意です。夏休みの宿題を8月31日に泣きながらする小学生でした(笑)。人間は、計画が計画どおりにいかないときに苦しくなります。こうしようと思っていたのに、そうならなかったとき「なぜだろう?」と思ってしまうのですが、私はそうなったときの状況を楽しめているのかなと思います。常にそうでは駄目ですが「また尻に火がついてやってるな!」みたいな気持ちで取り組んでいます。

余った時間にどんな楽しいことがあるかを考え、宿題を早く終わらせるのが夏休みの計画です。まちづくりの計画は夏休みの計画とは違い、ずっと続いていくものです。まちに寄り添っていく中で、どんなふうに楽しみを見つけるかという点が、苦しい部分を楽しむマインドであると同時に、一緒に歩んでいる感覚を楽しめることにつながると思います。

象と象使いの関係が『スイッチ!』という本に掲載されていました。象と象使いでは、どちらがどちらをコントロールしていますか。普通は象使いが象をコントロールしています。私たちは、象使いになるために計画を立てます。世の中が今どうなっていて、今後の変化の予測がこうだから、こうしようということを頭で考え、次の方針を決めるわけです。象使いはそうやって方針を決めて、象に「こちらに行くんだぞ」ということを教えます。

ところが、ひとたび象が、象使いの示した方向ではない方向へ行きたくなった場合、結局勝つのは象なのです。象使いと象では、役割は象使いが象に行き先を教えるのですが、力関係で勝つのは象です。これは人間の思考と感情の関係と同じだと書いてあり、本当にそのとおりだと思いました。8月31日まで宿題を残してしまうのは、感情のままに楽しいことをやってしまうから、そうなってしまいます。

象が行きたい場所と、象使いが頭で考えていることが一致しているとき、一番行きたい方向へスイッと行けます。その状態を作るのがうまければ、いつも楽しく仕事ができます。やりたいと思っていることと、実際にすべきことが合っていることが大事だと思います。

▼米田
私たちの会社の目指すべき点をお話いただきました。やりたいことと、すべきことを上手に一致させ、使命感を持って取り組むことは、今後の重要な課題です。

続いて、京田さんお願いします。京田さんと当社は、グランドプラザで知られる富山市中心部の広場計画でご一緒させていただいたことが始まりです。当時は、富山市の中心部に広場を作るイメージが湧かない状況でしたが、ものすごい手腕で取り組まれ、今では全国で最も成功している広場といわれています。京田さんと接していると、困難な局面も、焦らずしっかり一歩一歩実践されていると感じます。その秘訣を教えて下さい。

▼京田
当時は結構焦っていました(一同笑)。計画情報研究所が創業30年とお聞きし、なるほどと思いました。私が富山市役所に入ったのが37~38年前です。その頃は、測量、設計、計画、みんな自前で職員が作る時代でした。

私は造園職で採用になりました。当時、富山市にファミリーパーク(動物園)を造る計画があり、初めて造園職の募集があり採用されました。入ってみると公園緑地課の先輩方は、ほぼ東京農大造園学科卒であり派閥がありました。私は違う大学だったことから、仕事を教えてもらえない、面倒な仕事を回されるということが2年ほど続きました。B型で楽天的なところがあったので、意味も分からずやっていました。でも、面倒な仕事って実は面白いのです。

あるとき、「能楽堂の中に茶室を作るから茶庭を作る」という仕事が来ました。大学時代、少し造園を学んだといえ、茶庭の知識は無くお茶の経験もありません。設計しようと思うと、まずお茶を知らなければいけません。時間が限られているので、すごく偉い先生のところへ行って、フワッとお茶を教えてもらいました。京都に連れて行ってもらい、灯籠などを扱っている業者さんを見て回ったら、非常に興味深く感じました。先輩たちが面倒だから京田にやらせておけと押し付けた仕事が、本人にとっては結構楽しいものに変わっていったという時代がありました。

グランドプラザを作るときも、副市長の望月明彦さんが国土交通省から来ており、広場を整備する話になりました。それまでも全国各地で広場が作られていましたが、ほとんど使われていない印象がありました。そのような中、屋根付きの広場を作ることになりました。しかも、時間がない中、予算もつかめず、全国区のコンサルタントに設計してもらったら4億円という見積もりが来ました。算出根拠は、アーケードの単価を用いたと聞き、広場にして使うのであれば、いろいろな設備が必要だと考えましたが、時間がありません。まちづくり交付金制度ができたばかりで、望月副市長からは金は使っていいと言われていたので4億円×4で16億円を計上しました(一同笑)。

正気に返ると16億円も使ってしまい、これで利用されなかったら俺の首は飛ぶなと思いました。市の職員だけでその後の利用を考えても絶対にうまくいかないと思い、計画情報研究所をご紹介いただいて一緒に仕事をすることになりました。全く初めてのことでしたから、とにかく走りながら、市の職員だとかコンサルタントだとかではなく、みんな同じグループの仲間として、ああでもない、こうでもないと意見を出し合って進めました。

その結果、関係者みんなが自分の広場だという思いになり、何とか賑やかにしなければならないという思いが完成後もずっとつながっていったことが大きかったと思います。計画から関わった人達みんなから愛着を持って育てていただいたことが、今となっても良かったと思うし、自分自身にとっても楽しい仕事ができたと思っています。

▼米田
計画の肝といえる大事なところをお話いただきました。また、面倒なことを面白いと感じて取り組むことも、これからの私たちにとって大事な視点かと思います。

続いて、金井さんから、仕事を楽しくするための秘訣を教えていただきたいと思います。金井さんは当社の代表の大学の研究室の先輩であり、私たちの会社が目標とする会社を長年経営されていました。コンサルタントの大先輩の立場から、教えていただければと思います。

▼金井
私は最初、なぜ、仕事を楽しくするためにしていることを聞かれているのか非常に疑問でしたが、今日お集まりの皆さんの顔を見ると、プロの方がお集まりですので、その理由が分かってきました。

はっきりと言えるのは、30年前は技術者自身が総合的な視点、専門的な視点、現場や地域の視点を分かっていれば、いい仕事ができたのですが、今はそうではありません。地域社会が良くなり、経済が良くなり、環境が良くなることを考える次の段階に来ています。さらに、持続的発展や地域における人材育成、地域の振興と、ハードルがどんどん高くなっています。私はO型ですので、どれだけ悩んでも次の日はいつもけろっとしているような気楽な人間ですが、確認しなければいけないと思っていることが5点ほどあります。

一つ目は、私たちを取り巻いている時代状況をきっちり見ることです。厳しい状況の中でも楽しいことを追いかけていく。そのときに大事なのは、先ほどお二人からもありましたように、自分本位ではなく、みんなにとってどうかという視点です。私は再開発に数多く携わってきましたが、うまくいくと「私がやった」と言う人が200人も300人も出てきます。たくさんの人がそう言って喜んでくれることを想定して、苦しいこと、つらいことを乗り越えていけば、全てが楽しくなってきます。

二つ目は、楽しく仕事ができる態勢でなければいけないということです。自分を支えてくれる家族や地域コミュニティーの全ての人が楽しいと思える状況に持っていくことで、自分も楽しくなれます。

三つ目は、時代が提起している課題があり、それに対する役割が理解できれば、楽しみが生まれるということです。厳しい中でもその先にある楽しいことを目指すような積極性、現場対応力、目標設定力、共に学び・共に育つという視点で地域おこしやまちおこしに取り組めば、最初から楽しいものです。

四つ目は、地域貢献という役割発揮を期待されていることを認識することです。コンサルタント・技術者冥利に尽きると思うのですが、自分の仕事だけでなく、地域のコーディネーターやリーダーの役割をしなければならないという一つ上の段階にいます。みんなが楽しい状況に持っていかないと駄目で、これは北原社長が特に心掛けていると思うのですが、そのように立場を変えていけば、ガラリと変わります。

五つ目に、今、私たちの職能は一体何なのかということが、真剣に問われていると思うのです。30年間の取り組みを振り返って整理し、各自の専門性を総合化して力量を発揮することが重要だと思います。

▼米田
金井さんからは、当社へのエールとして、今後もしっかりやっていくようメッセージを頂いたと思います。大変厳しい時代を迎える中、どうすれば力を合わせ前に進めるかを考えていくべきだという力強いメッセージを、先輩から頂いたと思います。

その2に続く)