株式会社計画情報研究所

COLUMN

「のと里山海道」の無料化に思う

平成25年3月31日の『のと里山海道』の無料化から1年余りが経過しました。長年仕事で携わってきたことから、無料化への思いを振り返ります。

無料化の前倒しが決定

思い起こせば、平成22年6月に谷本石川県知事が、県からの貸付金や出資金の135億円の償還放棄と引き換えに、能登有料道路と川北大橋有料道路、田鶴浜道路の3路線を同時に無料化することを表明したことが始まりです。

能登有料道路では年間数十億円の料金収入がありましたが、これも手放すことになりました。高速道路事業のように料金徴収期間の延長や、維持管理費ねん出のために当分有料にするなど、無料化しない選択肢も当時はあったかもしれない中での大英断でした。

無料化の効果は計り知れず

「損して得とれ」ではないが、無料化により、能登地域への新たな企業進出や定住人口の拡大、主要観光地の入り込み客の増加など、その効果は計り知れません。
全国で有料道路の無料化が数多く実施されてきたが、ここまで目に見える形で無料化効果の大きい事例は聞いたことがありません。


無料化一周年記念チラシより抜粋

無料化効果を次につなげていくために

いいことずくめの状況ですが、あえて課題を挙げるとすれば、効果をいかに持続させるかということです。
能登島大橋も、かつての有料道路が無料化された道路でした。リゾート・観光施設の進出など、県内でも有数の観光地として人気を博していますが、無料化から15年以上が経ち、有料道路時代の記憶も薄れ、その効果だけでは過疎化や空洞化に歯止めをかけることはできません。
世界農業遺産の登録や、これに続く北陸新幹線の金沢開業、NHKの連続テレビ小説『まれ』の放映決定など楽しいトピックスはありますが、これからも話題に事欠かない取組みを継続していくことが必要です。


無料化開始式(横田料金所)


無料化一周年記念イベント(別所岳サービスエリア)

広域の交通システムの確立が課題

筆者は「能登有料道路の無料化は必要なのか」「無料化の功罪は?」の検討から始まり、「無料化を多くの人にPRする」取り組みまで、様々な仕事に携わってきましたが、有料から無料にいかにスムーズに切り替えるかの検討は特に大変でした。
知事が横田料金所でくす玉を割る予定だったのですが、知事を乗せた自動車が無料化を祝うために集まるであろう多くの車両の渋滞に巻き込まれないようにすること、しかも一般車の交通の流れも確保しながら、上下車線数の切り替えや通行規制をいかに行うか・・・。
と同時に、各料金所等で車両を一旦止めての無料化カウントダウンやファンファーレの演出も頭を悩ませました。
浜辺で、打ち上げ花火の練習もしました。着火してから何秒で打ちあがって音が鳴るのか、風も吹くし雨も降るかも…。思い出しただけでゾッとします。

これからは、『のと里山海道』を活用して、新幹線効果をいかにして能登全域に波及させていくかが大きな課題となります。
金沢駅や金沢港、和倉温泉駅、『のと里山空港』などの交通拠点と、各地に広がる観光拠点をいかにストレス無く、スムーズに移動できる交通システムを用意できるかが重要と考えます。これからの課題として取り組んでいきます。

(四藤)