「東京ではなく、金沢に住むという選択」
ゲストスピーカー席
(社)日本建築家協会〔北陸支部石川地域会〕の主催するシンポジウムにゲストスピーカーとして参加した。テーマは「東京ではなく、金沢に住むという選択」であり、個人的には、これからの「社会」を考えるいい機会になった。
「住む」と「働く」の関係
EUの「働き方研究」(発表スライドより)
「住む」と「働く」はセットで考える必要があり、これからもその関係は続きそうである。通信技術の発達は進むが「働く」ことに関して空間的制約が完全にゼロになることはない。
しかし一定の実績、人脈、ビジネスモデルの構築に成功した場合、ある程度「どこに住んでも仕事ができる」という状態になる。居住地の選択権が得られた場合、東京を去るという考えは既に行動として現れている。
「働き方」が変わる
勉強熱心な参加者が多かった
今後はまず個人レベルでの「働き方」の変化に注目する必要があるだろう。従来の成功モデルへのモチベーションは低下し、セルフマネジメントへの関心が高まると予想される。それは、人とのつながり方、時間の使い方、生活と仕事の連続性に対して、自己決定したいという欲求が強まるとともに、それを実践する「働き方」が増えるということである。
具体的な「働き方」は模索中であるが、複数の仕事の重ねあわせや、小規模な組織がネットワークする形態がイメージされる。
「都市政策」はどこに向かうべきなのか
一方、都市レベルでは、有機的な側面が注目され、量としての成果よりもクオリティが重視されていくであろう。新しい欲求をつぎつぎ生み出し消費するのではなく、文化や建築のストックを可能な限り活用し、保全していく政策が増えるであろう。そのため都市の機能面の議論から多様性、文脈性、くらし等への議論が強まると予想される。風土論や文化人類学的アプローチが政策とつながっていく可能性を強く感じている。
謝辞
今回のシンポジウムは5時間30分の長丁場であり、ゲストスピーカーも8人という大掛かりなものであった。そのためディスカッションは一つの結論に向かうものではなかったが、多様な意見がつぶされることなく存在し続けた点はよかったと思う。触発される意見に多く出会えた。
主催団体の皆様、他のゲストスピーカーの方々、また会場の皆様に感謝したい。