スタッフコラム

トークイベント その3 私達が目指す姿

会場からの問題提起

米田

 ここで会場の方からもお話しをいただきたいと思います。金沢学院大学教授の竹村先生からお願いしたいと思うのですが、竹村先生は石川県土木部の政策立案において中枢的な役割を果たされてきました。そのような視点からもご示唆いただきたいと思います。

竹村

 30周年おめでとうございます。30年ほど前の県庁時代からのお付き合いで、初めは「香島津回廊」というサイクリングロード計画、その後はパーク・アンド・ライドのような都市部の交通系が主だったと思いますが、最近は環境、観光、福祉、教育など多様な分野で学際的に活躍されているのは、北原社長の慧眼、人徳、皆さんの努力の賜物かと思います。心から敬意を申し上げます。

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 大学には教育と研究、社会貢献・地域貢献という三つの役割があると思います。特に最近は自治体との包括連携協定で、われわれも学生と一緒に町に出て、地域の問題を発掘し解決していこうと動いています。先ほど御祓川大学の話もありましたが、そのときに重要なのが協働、コラボレーションかと思っています。行政、地域、大学、そしてまちづくりの専門家(プランナー)の協働がとても大切です。プランナーとしてリードしたりサポートしたりすることによって、計画が非常に質の高いものになると思います。私も学生を連れて頻繁にフィールドワークやワークショップに行っており、前期も6回200人ほどを連れて回ったりしましたが、そのような努力が大事かと思っています。

 もう一点、最近特にITやAI(人工知能)の活用が非常に注目されています。AIが囲碁で人間に勝ったり、小説を書いたり、レンブラントの絵を描いたり、車の自動運転をしたり、どんどん進化しております。では、都市計画の世界はどうかというと、残念ながらビッグデータ等大量のデータを使って都市政策を方向付けして分析していこうというところにとどまっていると思います。やはり人間が一番大事だと思います。まちづくりの話がいろいろ出ましたが、こういう総合的、学際的な分野は、人間の知恵や判断が必要です。最終的に決めるのも人間、行動するのも人間であり、これからますます人間の役割は大きくなると思います。そのため、プランナーの役割はこれからも大きいと思っています。

 最後にコンサルタントの役割ですが、コストダウン、マネジメント向上等はコンサルタントの設計次第で大きく変化するため、ますますその責務は高まると思います。個人のスキルアップと組織のパワーアップが必要です。ゼネラリストとスペシャリスト、幅広い視野を持ちつつ専門的なスキルを持った人材を、ぜひ育成していただきたいと思います。そして、彼らが夢と誇りを持てるような場をぜひ育ててほしいという見地から、情報とプランニング(計画)という名のとおり、計画情報研究所がますます発展されるよう祈念して、コメントとさせていただきます。

米田

 森山さん、金井さんからも話がありましたが、これからは大学生も計画を担う重要な存在であり、先生の取組とご一緒できればと思います。また、専門性と総合性をしっかり私たちが身に付けていくために、組織自身をどう変革するかに関し、切り込んでいかなければならないと思っています。続いて、金沢美術工芸大学名誉教授の荒井先生からもお願いします。荒井先生はユニバーサル・デザインの分野でご活躍されており、計画がモノとして最後に実現する過程に携わっておられます。

荒井

 30周年おめでとうございます。あらためて素晴らしいことだと実感しています。それから、このような刺激的なシンポジウムに立ち会えたことを非常にうれしく思っています。私は日本でいち早く、工業デザイナーとしてユーザー参加型のユニバーサル・デザインの具体的な開発研究に取り組み、その延長でプロダクトから住宅設備、さらに公共建築という一連の流れで、県庁や市立病院など建築領域におけるユーザー参加型のユニバーサル・デザインを、現場の方々と一緒に推進してきました。

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 思い出されるのは、計画情報研究所の安江さんとモデル交通計画を一緒に取り組んだときのビデオプレゼンテーションです。当時の運輸省はリフト付きバスを推進しており、それに対して金沢からは、今では「ふらっとバス」として当たり前になっている低床バスを提案しました。その際、低床バスとリフトバスの映像を流し、私たちはこれからどちらを選びましょうかというプレゼンテーションをしたのです。私たちは「これからはフラットバスがいいです」という言い方は一切しなかった。これはとても衝撃的なことでした。つまり、誰が決断するのかということです。説得ではなく納得のためのプレゼンテーションだったことを、明快に覚えています。その秘訣は、動く画像で伝えることでした。つまり、所作の質感を映像で見たときに、それぞれの人が専門性を越えて、これは大変だ、これは具合がいいということを感じて、言葉にできることだったと思います。

 公園が農園化する話などは非常に共感しながら聞いていました。ぜひ、超高齢化とノーマライゼーションという理念もありますので、ユニバーサル化の中に加えて展開していただきたいと思います。
 私は今日お話を伺って、大変なパワーを頂きました。本当にありがとうございます。この少人数でこのお話を聞くのは、ちょっともったいないと思っています。私なりにあらためて共感するキーワードを出しますと、やはり現場性という言葉が、まずあると思います。それから、面白さの発見という話もありましたし、楽しんでやるというお話もありました。それをもう少し解釈しますと、「主体的な責任感ある創造性」ではないかと思います。それは、専門家がどんなに頑張って専門的な知見をまとめても得られません。今日のお話では、現場の方々との連携ができたときに初めて責任ある主体性、創造性が生まれるのではないかということでした。そして、関係者が肩を並べる関係になったときに、創造的なプロジェクトが生まれるのではないかと、あらためて実感しています。

 学生たちが現場のプロジェクトを通して学ぶ事例をご紹介いただきました。大学内だけでは学びに限界があります。私の授業でも、車いす利用者や視覚障害の方と一緒にまちに出て、ものを作って検証するようなことをしてきましたが、やはり学生の目の色が違います。そして、ユーザーの方々のデザインに対する認識が大きく変わってきています。

 今日のお話を聞いて、現場を通してどのような方々が、どれくらい創造的に関わって、豊かなまちづくりをしていけるのか、そのコーディネーションが、実は計画の肝であるということを実感しました。それと同時に、それぞれが専門性を高めていくことが必要です。

 あらためて、この場に立ち会えたことを非常にうれしく思いますし、また、これからもこういった創造的な関係性を編み上げていく一人になれればと思います。

米田

 今までのお話をまとめていただき感謝します。私たちは、責任感のある創造性の主体にならなければならないですし、コンサルタントだけが主体化しても意味はありません。いろいろな主体をつなぎ、自分たちもつながっていく一員にならなければ、計画は生きたものになりません。それがこれからの計画のあり方であり、クリアしなければならない第一条件なのかと思います。

まとめ(私達が目指す姿)

米田

最後に、お一人ずつ今までのポイントをまとめていただきます。

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森山

 たくさんの気付きがあったのですが、一つ頭に浮かんだのは、関わった方が楽しいなということです。御祓川の場合、「まち・みせ・ひとの関係」という言い方をしていますが、今はその関係が、ある意味切れてしまっていて、その切れていた関係をもう一度結び直すことが、人とまちの関係においても、人と人の関係においても、また企業と人の関係においても、企業とまちの関係においても起こっているのではないかと思います。

 そのことが、きっと豊かさにつながっていくであろうし、そのつなぎ役としての計画情報研究所の役割、また今日お集まりの方々が現場でのつながりを生かす役割に期待して、私もわくわくしながらこれからもやっていきたいなと思いました。

京田

 私は4月で富山市役所を退職し、今は富山市民プラザという会社にいます。まちなかのにぎわいを作り出すことが仕事ですが、なかなかうまくいっていないと思っています。

 かつて市役所にいた若い頃は、地図に残る仕事ができると言われ、公園の仕事は自分が設計したものが何年かすれば地図に載って「これは俺がやった仕事だ」みたいな部分もありましたが、これからは地図に残るというよりも、人の心に残る仕事ができればと思っています。

 市民プラザにいても、どんな立場にあっても、まちづくりに関わることはできると思いますので、続けていきたいと思っていますし、今日のこの機会を得て、皆さま方からいろいろな知恵をお借りしながら、北陸が元気になっていけばいいなと思いました。どうもありがとうございました。

金井

 今日のお話を聞いていて、北原社長個人の努力もさることながら、社員の方の努力と、今日集まっている専門家の皆さんと連携していい仕事をやってきたということ、そういうご努力があったことが分かりました。これからの話としましては、感謝と挑戦ということでしたが、やはり地域の方との信頼を強めることができれば何もかもうまくいくと思います。学び合いと育ち合いで、人を創造し、お互いの領域で貢献することが時代的テーマだと思いますので、さらなる努力をご期待申し上げたいと思います。

米田

 ありがとうございました。実は先日、ある住民説明会に行ったのですが、「コンサルタントの◯◯です」と紹介いただいた瞬間に距離感が生まれました(一同笑)。「この人たちは何を言っているのだろう。地元のことも知らないのに」みたいになってしまうのですが、その地域に2年、3年と入っていくと、個人名で呼ばれるようになってきますし、信頼関係もできてきます。

 私たちコンサルタントの仕事、計画の仕事を再定義すると、仕様書にある項目をこなしていくのではなくて、その裏側にある人間関係をしっかり作っていくことこそが、計画が意味を持つための重要な点なのではないかと思います。動かない計画をどれだけ作っても仕方がない時代、地域として何かに絞り込んで、本当にいいものにしていかなければならない時代を迎え、先ほど代表の北原も言いましたが、そういう時代に私たちは挑戦していかなければならないという思いを胸に刻みました。

 フロアの皆さま、ゲストスピーカーの皆さまからたくさんの知恵を頂き、ありがとうございます。このテーマに終わりは無く、追い続けなくてはならないと思っております。私たちの会社は次の30年に向けてスタートを切りますが、皆さまの温かいご支援、ご指導をこれからもお願い致します。ご清聴ありがとうございました(一同拍手)。

編集後記

 トークイベントではゲストスピーカーの方々、フロアの方々から、たいへん示唆に富むお話をいただき、計画に携わる私達が目指すべき姿が浮かび上がりました。今後一層努力を重ね、より複雑化する社会の課題解決に向け、多様な立場の方と手をつなぎ挑戦を続けたいと決意します。

 

2017年8月18日 11:26